OzaShin’s diary

活動報告、機材レビュー等

Clavia Nord Lead A1レビュー

Claviaのヴァーチャルアナログシンセサイザー、Nord Lead A1を自宅スタジオに導入しました。

www.nordkeyboards.jp

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 Nordを導入した理由

なぜ今Nord Leadなのかと言いますと、①音質が良い ②デジタルで発音数、ティンバー数が多い(複雑なレイヤリングが組める) ③階層が無く操作性が高く、音色制作に没頭できる ④値段が安め という条件を満たしていたからです。

Nord Lead 4とA1で最後まで悩みました。どちらも楽器店でガッツリ試奏しました。4のインパルスモーフィングはDAWで制御したらきっと便利だし、A1のオペレーションのしやすさ、制限された感じの特殊なオシレーター構造にも何故か強く惹かれました。

A1にしたのは、インパルスモーフィングは頑張れば同じことがモジュレーションホイールでもできるし、A1の特殊なオシレーターでも4ティンバーあるのでそれなりに作り込めるだろうと思ったからです。

 

最近はアナログ回帰の流れがありますが、音質が飛び抜けて有機的な分、変調の自由度が低く、複雑なモジュレーションを利用した現代的な音作りに対応しづらい機種が多い気がします。過激な音といったらウェーブフォーム、FMなどが主流ですからね。

3年ほど前から12ボイスのデジタル・アナログハイブリッドシンセのProphet12を使用しているのですが、モジュレーションの自由度の高さ、音作りの奥深さ、汚せるエフェクトの豊富さ、余裕のあるボイス数などにとても満足しています。しかし、Prophet12は非常に個性が強く硬質な音色を持っているので、Prophet12で出せないような粘り気のあるベース、柔らかいパッドなどが出せるデジタルシンセを探していました。レビュー動画をいろいろ見て、Nordの自然なフィルターの質感にとても驚きました。

 

Nord Lead A1 良い点

とにかく音作りが早くできます。オシレーターの構造はやや特殊ですが、パネルに説明が書いてあるので説明書なしで大丈夫です(説明書に波形のイメージなどが載っているので、一度仕様の確認したほうがいいと思います)。オシレーターコンフィグにより、シンクやFMなど、少し面倒なイメージのあるモジュレーションが簡単に行なえます。しばらく使っていると、出来ないこと(たとえばSawとSquareのデチューンなど)も見えてきてしまうのですが、別レイヤーを駆使すれば作れることが多く、現時点で不満はありません。

フィルターは6種類の中から1つを選択する方式です。フィルターを切り替えるだけで、カットオフ全開でも音質が変化します。フィルタードライブのノブを上げると更にフィルターのキャラクターが強く出る感じになります。TBフィルターの粘り気がとても好みです。MOOGフィルターも好きですが、TBの腰が低い感じの歪みが気に入りました。

アンプエンベロープADR方式で、ディケイのノブを最大にすると持続音になります。ADSR方式の、サスティンの値を低くしアタックを強調するような音作りができませんが、別のレイヤーでアタック部分を強調するサウンドを重ねれば大丈夫だと思います。ディケイとサスティンは同時に動かすのが面倒なので、1つにまとまっていても全く不自由を感じません。

エフェクトはモジュレーション系を6個の中から1つ、ディレイとリバーブは独立して1つずつあります。モジュレーション系ではリングモジュレータでかなりぶっ壊れた印象のサウンドが作れるのと、コーラス・アンサンブルの質感の良さが気に入りました。空間系ではリバーブの質感がとてもきめ細やかな感じでいいです。リバーブは5種類の中から選び、Wet量の調整のみになります。

 

音作りがとても早くできるので、4レイヤー重ねた複雑なサウンドでもすぐに完成します。Prophet12は2レイヤーが可能ですが、自分で作ったサウンドは1レイヤーのものが多かった気がします。レイヤーのコピーやペーストも簡単なので、似た系統の音を重ねる音作りがとてもしやすいです。

 

Nord Lead A1改善してほしい点

汚し系のエフェクトがあまり実用的でない気がします。モジュレーションエフェクトに「Drive」というものがありますが、サチュレーションのような潰れる感じなので、過激な音作りには向いていません。Driveを12時から右に回していくと音が引っ込んでいってしまう仕様も少し使いづらいです。12時まではサチュレーション、そこからさらに回すとオーバードライブ的な変化、などだと良かったのですが……。個人的にはNord Lead 4のビットクラッシャーがA1にも入っていてくれれば最高でした。歪みに関しては、外部エフェクターを接続して使っています。LINE6のM5 Stompboxなのですが、シンセにもガンガン使える仕様になっていますので、また今度紹介したいと思います。

LFOモジュレーションエンベロープオシレーター(ピッチ、コンフィグ)とフィルター(カットオフフリケンシーのみ)でしか使えません。Nord最大の武器であるモーフィングがあるのでそこまで気になりませんが、LFOでエフェクトを動かす、などといった設定は不可能です。

ホイールモーフィングとベロシティモーフィングで設定できるパラメーターが異なります。説明書に明記されていますが、ベロシティモーフィングの場合はリバーブのWet量などはコントロールできません。つまり、強く弾くほどリバーブが強くかかる、といった音色設定はできません。A1のリバーブはセンドのように接続されているので、打鍵ごとに設定が変わるリバーブでもできそうなんですけどね。ホイールではほとんどのパラメーターを制御できます。

プログラムモードで作ったレイヤー構造を直接パフォーマンスとして保存できません。単体のレイヤーを作るモードがプログラムモードで、4レイヤーまで重ねて保存できるのがパフォーマンスモードです。レイヤーモードでも4レイヤーの組み合わせを作ることはできるのですが、それらをパフォーマンスに保存する場合は、①全てのレイヤーを1つずつ保存し、②パフォーマンスモードで先ほどの各レイヤーを選択し、③保存し直す という工程が必要です。これは面倒ですね。結果、プログラムモードはほとんど使用することがなくなりそうです。せめてコピペで素早く持ってこられればよかったのですが……。もしかしたら別の効率のいい方法があるのかもしれません。

 

総括

いろいろ改善してほしい点も書きましたがとても満足しています。Nord、めっちゃいいよ!音作りに没頭できるシンセはたくさん知っていますが、ここまで音作りが早いシンセは初めてです。多機能ではなく、厳選された機能で音作りをしてみたい方、1台目にも2台目にもおすすめです。ぜひ楽器店で触ってみてください!