Vengeance Producer Suite Avenger レビュー
今回はVengeance Producer Suiteのソフトシンセ「Avenger」をレビューしようと思います。こちらもブラックフライデーセールで入手したソフトシンセになります。
特徴
- プリセットだけで十分使える
- しかし自由度が高いので細かなエディットが可能
- エフェクトいろいろあって嬉しい
- 若干重い
AvengerはEDM系のサウンドに特化したソフトシンセです。現代のダンスミュージックで通用する機能を持っており、即戦力の音源として使用できます。
Vengeanceといえばサンプリング音源でおなじみの方も多いかと思います。私の場合はサンプリング音源よりもReFX Nexus2の印象が強く、Nexusは非常にお世話になっている音源なのでAvengerの音質は間違いはないだろうと確信しておりました。
後発の特権を生かし、EDM系のソフトシンセでよく名前が上がるMassiveやSerumの機能や操作性をしっかり取り込んでおり、EDM系の音色はあと5年くらいはこのシンセで大丈夫じゃないかなと思っています。
音質
非常に抜ける音質で、存在感はありますが非常にクリアな音色です。同じVengeanceということもあって、プリセットはNexusっぽい音が多いですね。どんな音作りができるか分からない人は、まずプリセットをいろいろ触ってみることをおすすめします。「どこで使うんだこれ」みたいな自己満足的なプリセットが少なく、これ聴いたことある!と感じるものが多いです。少しルーティングが分かりにくい部分もありますが、シンセエディット中級者以上であれば、マニュアル未読でもどこに何があるのか迷うことはないと思います。
オシレーターやフィルターの種類が多く、多彩なサウンドが作れます。種類が多くなると選択が煩わしくなりがちですが、オシレーターとフィルターはそれぞれカテゴリ分けがされており、目的のサウンドにたどり着きやすいです。Massiveなどでは基本波形やウェーブテーブルなどの全てのオシレーターの種類がいっぺんに表示されてしまい、同じ系統の音が分かりづらい部分があり、オシレーター選択に時間がかかってしまっていましたが、この問題が解決されています。
また、サンプリング素材もオシレーターとして使用できるので、サンプラー+シンセサウンドといった、ワークステーション系のハード音源のような音作りもできるかもしれません。最近のDAWでは、素早くトラックを書き出す機能があるので、これらと組み合わせて使用すれば便利な音作りができそうです。
特に気に入ったのはオシレーター左側にあるV-SAWというユニゾンデチューン機能とChorderという違うピッチの音を重ねられる機能ですね。Chorderはデチューンさせて使うこともできるので、V-SAWとの組み合わせで非常に多彩なデチューンサウンドを作れます。
その他の機能・操作性
Massiveが確立させた(と勝手に思っている)D&Dでモジュレーションを組んでいく方式はAvengerでも採用されています。なんだかんだでこれが一番直感的ですよね。もちろんパラメーターがどこからどこまで動いているのかという動きも視覚的に確認できます。モジュレーションマトリクスからは膨大なパラメーター(おそらく100以上ある)をモジュレーションの行き先に指定できます。
感心したのはエフェクト内にある「MINI-CHAIN」。なんとXfer LFO ToolsやNicky Romero KickStartのように、内部に疑似サイドチェーンエフェクトを持っているというのが嬉しい!ループエンベロープやLFOを使えば確かに他のシンセでもできるのですが、たった2クリックでさっとサイドチェーン効果が使えるのは非常に大きいですよね。ディストーション系やモジュレーション系のエフェクトも種類多くて楽しいです。
負荷だけが若干きつい
機能・音質・操作性ともに申し分無いのですが、CPU負荷だけが弱点ですね。自分の環境であれば大丈夫かなと思ったのですが、複雑なモジュレーションを組んだりエフェクトを実験していたら単独でCubaseの負荷ランプが点灯してしまいました。プロジェクト内に最初から最後まで常駐させるのは厳しそうなので、差し替えて使うことになりそう。さすがにNexusのように困ったらとりあえずこれ、みたいには使えなそうですね。マシンパワーを上げたらもう少し気軽に使用できるようになるでしょうか……?
負荷が大きいため、環境によっては工夫して使うことになりそうですが、音質や操作性は最高で、全く不満はありません。Omnisphereのように、軽量モードのようなものがあると嬉しいです。
[追記]シーケンスカテゴリがものすごかった
ライブラリのSQ(シーケンス)のカテゴリがものすごい充実度でした。ドラム・ベース・コードなどが全て鳴らせるモードで、Nexusを使用の方にはおなじみかもしれません。この中に入っているジャンルの種類がとにかく多かったです。
これを全てそのまま使って曲を作るのには個人的に抵抗がありますが、ジャンルのお手本にしたり、音作りの参考にしたり、コード部分のアルペジオのみ使用したりと、様々な使い方が思いつきます。ジャンル研究にもとても役立つと思います。